Sakura Business News
2025年3月号
- コラム
- 長期間経過後の遺産分割ルール

相続が発生してから遺産が分割されないまま長期間放置され、更に相続が繰り返されることで遺産の管理や処分が困難となるケースがあります。そこで「遺産分割に関する新たなルール」が設けられました。概要について簡単にご紹介します。 本来、遺産分割をする際には法律で定められた相続分(法定相続分)等を基礎にしつつ、個別の事情を考慮した具体的な相続分(特別受益や寄与分といった、各相続人の個別の事情を加味した相続分のこと)を算定するのが一般的です。しかし、遺産分割が長期間なされないまま放置されると、具体的相続分に関する証拠等がなくなってしまい、難しくなってしまいます。そこで令和5年4月1日より、相続開始時から10年経過後の遺産分割については、原則として「法定相続分」または「指定相続分」によることとなりました(新民法第904条の3 )。これは被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は原則として、具体的相続分を考慮することなく、法定相続分又は、指定相続分(法的に有効な遺言書による相続)によって画一的に行う事となったということです。しかし、今回の民法改正は、あくまで「相続開始10年経過後は、具体的相続分の主張が原則できなくなった」という内容ですので、相続開始から10年経過後であっても、相続人全員が同意する場合は、引き続き、具体的相続分での遺産分割が可能ですので注意が必要です。今回の改正は令和5年3月31日以前に開始した相続も対象となっている他、経過措置により、施行日から5年間の猶予期間が設けられていますのでご検討の際には確認しておきましょう。