Sakura Business News
2024年10月号
- コラム
- 事業承継に適用できる遺留分の特例とは?
遺留分に関する民法の特例を利用することで円滑な事業継承の手助けとなることがあります。今回は「事業継承に適用できる遺留分の特例」についてご紹介します。 まず「遺留分」という制度についてですが、遺産の相続人のうち、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」という一定の遺産の取り分が法律上保障されています。もし遺言で特定の相続人に遺産をすべて相続させることになっていたとしても、この遺留分にあたる遺産の取り分は支払いを受けることができます。事業を継承する場合において、この「遺留分」により後継者に自社株や事業用資産を集中させて、会社や個人事業の経営を承継させることが難しくなってしまいます。そこで、事業承継を円滑に進めるため、経営承継円滑化法において「遺留分に関する民法の特例」(平成21年3月1日施行)が設けられています。この民法特例を活用することで、先代経営者の推定相続人である全員(遺留分を有する者に限る)の合意のうえで、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式・事業用資産の価額について、次の2つの法的手段をとることができます。①除外合意‐会社においては自社株式の価額が遺留分を算定するための財産の価額から除外できます。また個人事業者においては事業用資産(土地、建物、機械などの減価償却資産)の価額について、遺留分を算定するための財産の価額から除外できます。②固定合意‐会社においては自社株式の価額について、遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を合意時の時価に固定できます。これにより、相続時までに株式の価額が上昇したとしても、想定外の遺留分の主張を受けることがなくなります。